訪問看護は大変だし不人気?データからみる訪問看護の転職事情

 訪問看護の仕事探しについてネットで情報を集めていると、「大変」「きつい」「不人気」といったキーワードもちらほらと出てきます。実際に公表されているあるアンケートデータでも、看護師の7割が「訪問看護に興味がない」と回答したとか…。
 現場の訪問看護師を見ている限りはいきいきと仕事をしている方が多いですから、もしかすると就職前と後とで何か大きなズレがあるのかもしれません。ちょっと紐解いていきましょう。

リアルな看護師の声から訪問看護のイメージを考える

 有料職業紹介サービスの「看護のお仕事」を運営するレバレジーズ株式会社が、2018年に2つのアンケート結果を公表しています。訪問看護への転職事情を見ていく際にとても貴重なアンケートデータを公表していただいたと感じています。このアンケート結果をもとに、まずは転職前の訪問看護に対するイメージについて考察してみましょう。

 参照:レバレジーズ株式会社 ホームページより
 https://leverages.jp/news/2018/011701/
 https://leverages.jp/news/2018/032701/

 上図のアンケートについて対象の詳細は「看護師」ということですが、おそらく訪問看護師として勤務経験のない看護師に対して行ったものだと考えられます。そうでないと回答が偏ることになりますし、ここから先はそう解釈して話を進めていきたいと思います。
 興味がない、あまり興味がないの合計が67.3%です。そうですね、人気だとは言えなさそうです。興味をもてない理由と考えられるのが以下の情報です。

 ものすごい数値です。この「不安」について具体的に抽出されているものが以下になります。元の資料で内容ごとに分類されていますので、ここでもそのまま表示してみます。

【スキルや経験の不足】
 1.「医師や介護士など周りに頼れる人がいないので、自分で判断して行わなければいけない。失敗したらどうしようと思う」
 2.「急変時の対応」
 3.「病院とは違うシステムで、未経験だから」
 4.「ブランクがあること」

【業務内容、待遇面】
 5.「オンコール、休日、給料」
 6.「記録や計画書などが大変で、残業が多くなりそう」
 7.「何件回るのか?ノルマありか?件数でお金が決まるのか」

【患者さんとの関係性】
 8.「知らない家に行くこと」
 9.「患者様ご家族との関係」
 10.「他人の家庭に踏み込むことの複雑さ。ご家族との調整が難しそう」

【その他】
 11.「医療機関や他のスタッフとの連携」
 12.「車での移動」

 

 読み解いてみると、これら不安な理由は大きく2つに分類されることがわかります。

  • 未知から起こる不安(または想像による不安)…1,2,3,5,6,7,8,9,10,11
  • 二次的な不安…4,12

 運転やブランクが不安なのは理解できます。特に運転については看護とはまったく関係のないところですので、そこに不安があるのなら解決も難しいのかもしれません。ブランクについては訪問看護に限ったことではなく、病院に復帰するにしても同じだと言えるでしょう。

 多くは1番目の問題です。まず、環境もシステムも病院や施設と全く違います。病院や施設は待つ側であるのに対し訪問は向かう側ですから、全くイメージできない方もたくさんいるでしょう。
 すべての不安は「想像と伝聞」によるもので、仕組みが違うから余計に「訪問は特別」と思い込んでしまうのです。想像がつかない、あるいは偏った想像を伝聞から勝手に行ってしまうだけで、実際は勤務していないわけですから「訪問看護ってこうだよね」というイメージが根拠になってしまってるのですね。

 もちろんそれを否定するわけではありません。実際に訪問の多くは一人で知らない家に行くわけですし、多職種連系も必要ですし、事業所の考え方次第ではオンコールも大変なものになります。ただ、描いているそのイメージが不必要な壁となり、不安に繋がって「興味がない」に結びついてしまうのは残念であるともいえます。

 それでは、実際に勤務している訪問看護師の声にはどのようなものがあるのでしょう。

約半数が「訪問看護師になって良かった」と回答

 新卒を受け入れる訪問看護ステーションは増えてきているとはいえ、まだまだ中途採用がメインであることは確かです。つまり統計上は、訪問看護に進んだ看護師の9割以上が、何らかの不安をもって訪問看護師としてデビューしているということになります。
 以下は「訪問看護師になって良かったと思うか?」という内容のアンケート結果です。

 47.8%、約半数は「良かった」と思っているのが現状です。そう思わないに入る割合が19.2%ですから、入職前と後とでは逆転現象が起きているといえるでしょう。その理由として一部抜粋すると、
「ご自宅に伺い、病院よりも患者さん一人ひとりに合わせた援助ができる」
「利用者さんを身近に感じながら支援できた時」
「訪問を重ねるたび、利用者さんが色々な話をして下さるようになってきた時」
「利用者さんやご家族の生活に合わせて、最期まで関わることができた時」
など、看護の本質ともいえるような回答が並びます。それはつまり「看護師としての仕事のやりがい」です。

 一方で、訪問看護の仕事でスキルや経験不足で困ったことはあるかという問いに対しては、72.5%の訪問看護師が「ある」と答えています。その内容は機器の取り扱い、経験したことのないスキルや知識(疾患や制度)が多くを占めているようです。また、加えて家族とのコミュニケーションに困ったことのあるナースが6割近くいるようです。
 ただ、これはよくよく考えてみれば、病院でもまったく同じことであるのがわかります。科が変われば知らないことも出てきますし、それを勉強する必要があります。家族とのコミュニケーションにしたって病院でも必要です。家族と関わる頻度の差はあれ、場数を踏んで対応の仕方を覚えていくことに変わりありません。

 ちょっと大変かなと思うのは制度と多職種連携に関わることでしょうか。
 病院で勤務していれば看護師が医療費のことについて聞かれるケースは相当稀でしょうし、病院であれば職種間の連携も数が限られます。訪問看護に限らず地域に出ればこれらは確実に関わってきますから、むしろ新しいジャンルにチャレンジできると思ってプラスに考えていくととよいでしょう。(この点はケアマネさんのほうが数倍大変です)

 関連することでの補足ですが、レバレジーズ社の同じアンケートで「ひと月に何回のオンコールを受けるか」という設問があります。0回との回答がじつに46.5%で約半数を占めています。オンコールがネックだと考えている方も、少し不安が取り除かれるデータですね。

参考:訪問看護師は夜勤がないけど…オンコール対応の平均回数(頻度)はどれくらい?

「大変」「きつい」「不人気」は膨らませたイメージによるものが大きい

 訪問未経験者(就業前)と訪問経験者(就業後)の回答の違いをみても、これらよく見かける3つのキーワードは「イメージを勝手に膨らませてしまっている結果」であることがわかります。いえいえ、もちろん楽であるはずはありません。でも医療に関わっている限りは楽な職場などありませんし、どんな職場だって看護師は勉強し続けるものだと言われますよね。

 不人気ということに関しては、そこは明確に否定してもらいたいなと思います。逆にこれからは地域で輝くナースが増えてほしい時代ですし、訪問看護師が増えることで「実際」が見え、人気の職種になってくれることを願うばかりです。

 2019年1月に日本看護協会が発表した「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人に関する分析」のデータによれば、訪問看護師の求人倍率は3.78倍と突出してワーストです。求人が2.78件に対して求職が1件、明らかに不足しているということになります。不人気だからということも否定できませんが、地域医療のニーズが急速に拡大しているからだと解釈したほうが正解でしょう。実際に訪問看護の担い手は年々増加しているものの、それが需要に追いついていないというのは肌感覚でもわかります。
 もしちょっとでも訪問看護が気になれば、今イメージしている訪問看護のネガティブな部分を一回クリアにして考えてみることをオススメします。

この記事を提供しているライター
千葉県内訪問看護ステーションの元管理者。訪問看護を含め地域医療・介護・福祉の魅力を伝えるため、ホウカンジョブを運営している。
看護師 田中 良平
ホウカンジョブ事務局
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