訪問看護師を目指す方のための、介護保険からみる訪問看護の制度と仕組み

 勤め始めてからでも介護保険の知識は得られます。それでも初めて知ることだからやっぱり気になる。細かい数字やルールについてはここでは説明せずざっとですが、訪問看護で働くにあたって介護保険について知っておいてほしいことを並べてみます。

参考:医療保険版はこちら
訪問看護師を目指す方のための、医療保険からみる訪問看護の制度と仕組み

介護保険って何?のザックリとした説明

 介護保険。40歳になると第2号被保険者として給与明細の控除欄に出現します。この記事を読まれている看護師の中にも、すでに保険料を納付している方は多いのではと思います。
 介護保険とは、市町村が主体(保険者)となり、介護負担を保障することを目的とした保険のことです。国が25%、市町村と都道府県がそれぞれ12.5%、残りの50%を被保険者からの保険料で負担しています。私たちが給与から控除されている保険料も、この50%の中に含まれているわけですね。介護保険は公的なもので、対象となる被保険者のすべてが保険料を支払うことを前提(生活保護受給者は除く)にしています。

 では任意で加入している民間の医療保険などと全く違うものかといえばそうでもなく、保険ですので考え方だけは一緒です。あくまでも考え方のお話ですが…。
 例えばあなたがある民間の保険会社と医療保険を契約したとしましょう。毎月3,000円の保険料を支払い、入院時はに4日目から1日あたり5,000円の保障が出るとします。実際に使った方ならわかるかもしれませんが、例えば5日間の入院があった場合に2日分の給付を保険会社に請求し、10,000円が入院保障として手元に戻ってきますね。つまり、毎月の保険料を支払う代わりに、困ったときに給付が受けられるということです。きちんと保険料を支払っているからこそ、定められた相応の給付を受け取ることができるわけです。

 介護保険の場合も同じです。40歳以上の人は介護保険を毎月支払っています。ですから、40歳以上の方が疾病により介護保険を使ってもよいと認定(40歳~64歳までは条件が限定されます)されれば、決められた相応のサービスを受けられるということです。介護保険の場合は、被保険者の介護負担割合に応じサービスの現物給付として7割~9割を保険者が負担してくれるということです。サービスの「現物給付」とは、健康保険でいうならお金を請求するのではなく病院で診察や治療というサービスを直接受けることと同じで、介護保険だと訪問看護をはじめデイサービスやショートステイ、訪問介護、福祉用具貸与などのサービスそのものを受けることにあたります。要支援1.2、要介護1.2.3.4.5とそれぞれ受けられる金額に上限はありますが、保険ということで考えれば「保険料を払う=保険で保障を受けられる」というわけですので一緒ですね。

 ちなみに、介護保険を受けられるかどうかの要介護認定は、保険者である市町村が行います。申請には「主治医の意見書」というものが必要になり、調査員が自宅や入院先を訪問して認定調査というものを行います。
 介護が必要な状態かどうかがポイントで、同じ疾病でも完全に自立できていれば認定が下りない場合もありますし、自立度に応じて要支援1と認定される人もいれば要介護5と認定される人もいます。病状ではなく自立度(介護の必要度)によって、どれだけの介護サービスを受けられるかが決まってくるのです。

 また、40歳~64歳までの第2号被保険者が認定を受ける場合、決められた16疾病に罹患・発症していることが前提になります。脳血管疾患やがんの末期、一部の難病などがこれにあたります。このあたりの制約はありますが、介護が必要になるかもしれないから保険料を納め、その状態になったら被保険者が使えるものですよ、と簡単にでも覚えておきましょう。

介護保険を使って訪問看護を行うには

 介護保険を利用して訪問看護に入る場合、上記で説明したとおり介護保険サービスとして訪問することになります。
 その大前提として訪問看護ステーションは、介護報酬を受けて訪問看護を行うために指定を受けなければいけません。法人であり、人員基準を満たし、設備に関する要件を満たすことなど細かなルールをしっかり押さえ、所定の流れで申請・受理されるということになります。これら要件を満たして受理されないと、訪問看護ステーションとして介護保険を利用した訪問を行うことができません。公的な制度を利用するサービスはすべてそうですが、運営のためのルールがけっこう大変です。ですので、どこに就職するにしても「きちんと指定を受けた事業所」であることは間違いないはずです。

 指定を受けたら、実際に介護保険を使って訪問します。でもちょっと待ってください。依頼があれば看護師や理学療法士が訪問できる、という単純なものでもありません。
 訪問看護はケアマネージャーや病院、クリニック等から依頼が入るのが一般的ですが、実際に訪問するには主治医の「訪問看護指示書」が必要になります。この指示書には利用者の個人情報や疾患名、内服薬の内容、看護の指示内容などが書かれており、主治医の指示通りに訪問を行うこととなっています。看護師の業務は「療養上の世話または診療の補助」ですから、病院でも医師の診療ありきであるように、訪問看護もまた医師の指示なしには行うことができないのです。ですから、例えば指示の中に「排便コントロール」などの指示がないにもかかわらず摘便を行うようなことは、やってはいけない越権行為となってしまいます。想定される看護行為については、事前に主治医からきちんと指示を受けておくと安心です。セラピストが行うリハビリもまったく同じです。

 これで訪問できる環境がひと通り整ったわけですね。

訪問時間と単位数というものが決まっています

 介護保険で訪問する場合、制度上は週に何日訪問しても構わないことになっています。ただし、日数や回数、訪問時間についてはケアマネージャーが作成するケアプランに明記する必要があるため、その利用者の状態に応じて関係者で事前に話し合って決められることになります。利用者や家族の都合、訪問看護師の都合なども考慮され「毎週○曜日と○曜日の○時~○時」というように基本的な訪問時間が設定されます。
 そして前述したように、介護度に応じて利用者の使える最大金額(単位数)が決まっています。金額で説明すると地域や負担割合によって変わりややこしくなるので、これ以降の説明は「単位数」とします。病院でいう点数みたいなものです。例えば要介護1の方であれば、1ヶ月の上限は16,692単位(およそ166,920円/平成31年現在)と決まっています。その金額の範囲内で訪問看護を含むすべてのサービスを収めないと、超過したぶんは自費でサービスを受けることになってしまい大変です。

 では、訪問看護で1回訪問すると何単位消費することになるのか見てみましょう。(要介護1以上、平成31年現在)

  • 20分未満 … 311単位
  • 30分未満 … 467単位
  • 30分以上1時間未満 … 816単位
  • 1時間以上1時間30分未満 … 1,118単位
  • PT/OT/ST 1回(20分) … 296単位

 例えば30分~1時間未満の場合だと、未満とは書かれていても実際には1時間みっちり滞在するケースが多いです。1時間訪問で週2回の場合、月間だと約9回になりますから、訪問看護だけで7,344単位を使うことになります。先の要介護1のケースだと半分弱を訪問看護サービスで使うことになりますね。
 1時間訪問して、地域区分の割増や加算等も含めると平均しておよそ9,000円が事業所に入ってくるわけで、利用者負担も1割負担の方だと800円程度かかることになります。気を引き締めて看護にあたらないといけません。

 負担割合に応じて利用者から1割もしくは3割を事業所所定の方法で集金し、残りを翌月10日までに国保連合会という機関に請求します。そうして入ってきた報酬で事業所が成り立っているのです。もちろん、あなたの給与もここから賄われることになります。

 

 冒頭で「ざっと」と書いたのですが、これでもだいぶ簡単な説明で細かいことはまだまだたくさんあります。それでもおおよその仕組みは理解していただけたと思います。介護保険を難しく考えずに、細かいことは少しずつ覚えていきながら馴染んでいくとよいでしょう。

この記事を提供しているライター
千葉県内訪問看護ステーションの元管理者。訪問看護を含め地域医療・介護・福祉の魅力を伝えるため、ホウカンジョブを運営している。
看護師 田中 良平
ホウカンジョブ事務局
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