みなさんこんにちは。ホウカンジョブの看護師ライター、上村です。技術的なことで訪問看護への転職に躊躇されているナースが多いとよく聞きますので、私自身も訪問看護デビュー前に不安を感じていたことを思い返しながら、いくつかの記事にわたって現場での実際をお伝えしていこうと思います。
 今回は訪問看護での末梢点滴のお話です。

もちろん在宅でも医師から点滴指示が出ます

 利用者様の急な発熱や下痢、食事量の減少、CVポートの感染ほか急性増悪にて末梢点滴が必要になった場合、訪問看護指示書を受けている主治医から点滴の指示がでます。病院でいう注射処方箋にあたるのが「在宅患者訪問点滴注射指示書」です。

 介護保険の利用者様が連日の点滴加療を必要とする場合では、介護保険で訪問看護を利用すると利用限度額をオーバーしてしまい、自己負担が増えるだけでなく自費分が発生することがあります。よって、週3日以上の点滴が必要な場合は「特別訪問看護指示書」というものが出され、医療保険を利用して点滴を受けられることができる仕組みもあります。

 在宅では病院のように末梢点滴を持続で行うケースはほとんどなく(私は遭遇したことがありません)、訪問看護ステーションが稼働している日中に留置針で針を留置し、点滴が終了するころに抜針、または翌日も点滴がある場合はへパフラッシュにてへパロックします。

 抗生剤のみで開始から終了まで30分程度の場合は、点滴を施行し、その間に状態観察や陰部洗浄・清拭・更衣などの清潔援助を行なったり、屯用薬の使用方法の指導、変更や追加の内服薬のセットなど、その利用者様・ご家族様に必要な看護を行います。

点滴の環境はどうやって作られている?

 訪問看護ステーションには輸液や輸液セット、留置針はありません。主治医が連携している薬局があれば事前に届けられていますが、必要な場合は主治医の病院までとりに行く(ボランティア)ことになります。主治医の病院から何らかの形で、ご自宅に点滴が届いている状態を作らなくてはなりません。
 点滴棒もないので、私は大きめのS字フックを常に携帯していました。持ち合わせていない場合は針金ハンガーを利用し鴨居やカーテンレールにかけたりしています。

 あと、必要なのが針を廃棄する入れ物です。針刺し防止機能がついている針ばかりではないので、針刺し事故防止の観点からも口の広い針が貫通しない容器(良くコーヒーの缶ボトルを利用しています)を調達する必要があります。点滴が不要になったら、医療廃棄物は主治医に往診時などに引きとってもらいます。

一人のようで、きちんと守られています

 訪問は基本ひとりです。「自分ひとりで行って、うまく点滴できなかったらどうしよう」「すごく久しぶりすぎて点滴がうまくできないかもしれない」(あまり末梢点滴の指示は多くないので半年ぶり…なんてことも)という心の声は確かにありますね。一応、点滴の上手な看護師が行くことにしていましたが、それでも入らない場合は近くで訪問している看護師が応援に行ったり、訪問がなくあいている看護師が行ったりしています。それでも入らない場合は、主治医に報告して中止というケースもありました。ですから、心の声のような心配は不要です。

 ともあれ、数日の末梢点滴で入院しなくて済むのならば、利用者様・ご家族様にとっては、身体の負担が少なく病院と同じ治療が受けられることが幸いだと思います。

この記事を提供しているライター
看護師、保健師、介護支援専門員、養護教諭などの資格を持つ。総合病院で内科・外科・小児科・泌尿器科・亜急性期病棟・緩和ケア病棟などに18年間努めた後、長年の夢を叶えるため訪問看護の世界に飛び込む。
看護師 上村 亜貴
ホウカンジョブ事務局
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