最近ではそう珍しくもないのですが、なんとなく「ベテランナースが多い」という印象のある訪問看護の仕事に20代で就くことになりました。未熟なことが多いながらも早くから在宅看護に携わったことで、早く気付けてよかったということがたくさんありました。その中でも「もっとも学べたと思ったこと」とは。

なぜ訪問看護の世界に飛び込んだのか

 病院勤務していたとき、2年目あたりから退院支援に興味が湧きました。そんな病棟看護師はたくさんいると思います。後遺症が残り自宅での一人暮らしは不安な方、介助が必要だけどどうしていいか分からない方、老年夫婦の2人暮らしでなにかあったときに不安な方など、在宅での療養事情や環境はさまざまです。そういった患者さんにはソーシャルワーカーが介入していました。私たち看護師が介入するのは病院での状態と退院後に必要になるであるうサポートの提案のみでした。
 そういった中で患者、家族から不安な声を度々いただくことがあり、なにか自分にできるのではないかと考えていたのが興味の入り口です。ソーシャルワーカーだけではなく、自分の口からも説明できるように介護保険の手続きの場所や利用方法などを調べたりしていました。

 そんなタイミングで先輩に訪問看護に誘われた時は、興味もありましたが訪問看護は不安、ベテラン看護師でないとできないという思いが大きくありました。しかし、先輩の言ってくれた「誰でも初めてはあるし、何年経験しても分からない時だってある」という言葉に救われて、興味をもっていた訪問看護の世界に飛び込むことになりました。何もなければ飛び込む勇気はありませんでしたから、きっかけに救われたと言ってもよいでしょう。

訪問看護で看護観が変わる

 病院勤務では病気に対しての治療が全てでした。社会的背景などは情報として持っていても、それをソーシャルワーカーと共有する程度です。退院後の話は退院指導で行うものの、それはあくまで医療側の一方的な話が大部分です。

 しかし、訪問看護の現場では心不全の方に飲水制限がなかったり、糖尿病ではあるが甘いものを食べていたりと、病院勤務では考えられないようなことの連続でした。もちろん限度はあってのことですが、心不全の方は飲水制限をしてしまうと気にしすぎて水分を取らなかったり、糖尿病の方は食事制限などをしていても偏食だったりで血糖コントロールがつきにくかったりします。すべてではありませんが、それが「自宅での実情」だったのです。訪問看護ではそうした患者背景の中で一人ひとりに合った方法を考え実践します。それは、利用者が利用者らしく生活する上でとても大切なことだなと感じました。もちろん本当に必要なことは指導もしますが、訪問看護の世界に入ったことで病気だけを看るという看護観から「その人を看る」という看護観に変わりました。

周りより少し早く学べたことが財産に

 訪問看護で経験を積む中で「その人を看る」という看護観に変わってから、利用者と接する時にはその人がどんな人生を送ってきたのか、どんなことに興味があるのかなどを考えながら話をするようにしました。それまではどうしたら食事制限を守れるのか、どうしたら水分とってくれるのかなど医療的なことしか考えていませんでしたが、看る視点が変わってから自分がしたかった看護を考えるきっかけにもなりました。

 一方通行の看護ではなく、利用者その人を知るために話をしたりすることで一人ひとりに合った方法を考えるようになり、その結果として利用者の方に食事制限の必要性を理解していただくことができます。画一的な手段の提供と実践だけではなく、訪問看護の世界で看護を見つめ直すきっかけができたことで、看護師として一つ成長できたかなと思っています。年齢は関係ないのですが、私が大切にしている「その人を看る」を少し早く学ぶことができたのは、看護師を続けていく上で大きな財産になるはずです。

この記事を提供しているライター
総合病院で7年ほど勤務。知り合いの訪問看護事業立ち上げを機に、20代から訪問看護の世界に飛び込む。
看護師 加藤 久美
ホウカンジョブ事務局
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