訪問看護師として働きたいと思っても、仕事とともに重要なのが生活面。おおよその年収相場はどれくらいなのか、給与は働き方に見合っているかなど、転職に重視される給与やその仕組みについてポイントをまとめています。

常勤の年収は340万円~530万円程度と幅が広い

 ネット上の年収表記(参考年収含む)のある求人データをランダムに112件集めたものを統合しているので完全に正確であるとは言い難いのですが、訪問看護師の年収は340万円~530万円ほどの範囲内で収まっている形です。病院によって給与額が異なるように、訪問看護も事業者や事業所によって違いがあります。もっとも集中しているのは400万円~450万円のレンジです。112件のデータでの平均年収は4,389,115円となっています。これは現場での肌感覚とも近いので、実際の数字と大きな違いはないと思われます。年収500万円以上のデータも11件あり、ここまでくると夜勤ありの病院勤務よりも高いケースも出てきますね。
 もちろん地域や運営主体によっても差が出ますし、この平均よりも低いから避けたほうがいいというわけでもありません。働き方とも関連してくるからです。特に月給表記の場合はそれに加えて手当もプラスされることが多いですから、実際にどれくらいになるかは面接で直接確認してみる必要があります。

 総じて言えば、夜勤ありの病院勤務から転職すると目減り感はありますが、夜勤なしだと考えれば大きな差はないと考えてよいでしょう。
 訪問看護師が働く環境として「日勤のみ・週休2日・オンコールあり」という条件が最もスタンダードな形です。収入を優先させるのか、生活の安定を優先させるのか、このあたりが職場選びのポイントになってきそうです。病棟勤務と比べれば年収が低くなるのは仕方がありません。夜勤の分がそのままないと考えれば受け入れられると思いますが、そのぶん家族の生活とも合わせられプライベートも充実しやすいのが訪問看護です。多くの訪問看護ステーションは定休日が土日ですから、オンコール当番でない土日は一般の会社員と同じように過ごすことができますし、家族や彼氏・彼女などとの交流も充実してくるでしょう。同じ週5日勤でもクリニックの看護師などと比べれば給与も良いですから、ワークライフバランスを良好に保つことができる訪問看護師は、これから選択肢の中に入りやすくなってくる職種ですね。

 また、事業所の中には歩合制を取り入れているところもあります。基本給に加えて訪問件数の増加に応じた手当が上積みされていくという仕組みです。次項で説明しますが、歩合制は訪問看護のシステムにおいて理にかなった形でもあります。同じ時間勤務するならなるべく稼ぎたいと思う方は、歩合制の訪問看護ステーションで働いてみるのもよいでしょう。

訪問看護の給与の出どころはどこにある?

 給与をもらって働くということは、当然ですがその財源がなければいけません。その財源は、看護師やセラピストによる訪問によって得られます。

 病院で勤務していてもまったく同じで、患者が入院したり外来受診することで病院に診療報酬としてお金が入ってきますよね。ただ、働いているとなかなかその流れまでは見えてきません。8時から17時まで働いて、夜勤もこなして、みんなでシフトを回しながら1ヶ月勤務して月給○○万円といった感覚で給与をもらいます。空床を作らないとか、点数を取りこぼさないようになど経営面に多少は絡んでいることもありますが、看護部長でもないかぎり病院の収入について直接的に関与することは少ないでしょう。

 訪問看護はそのあたりが違い、どうやって自分の給与が成り立っているかダイレクトで見えてきます。そういう意味では、ひとりの看護師という立場でありながら「営業」の要素も加わっていると表現してもいいくらいです。(もちろん売り込むという意味ではないです)
 一般的な介護保険メインの訪問看護ステーションであれば、1件あたりの報酬はおよそ9,000円程度のところが多いと思います。自分が1日5件の訪問を行うとして、それが月間21日コンスタントに続くとなると、9,000円×105件=945,000円程度の報酬が事業所に入ることになります。訪問看護の収入源はここだけですから、この中から皆さんの給与が支払われることになります。これだけコンスタントに訪問に入れていれば、明らかに病院よりも低い事業所の運営費用や事業者負担の社会保険料を差し引いたとしても、平均して月収50万円くらいは貰えてもいい計算になりますね。仕組みだけで考えるなら、コンスタントに訪問がある事業所ほど個人に返ってくる給与も増やしやすくなります。

 ただ、訪問がそうそうコンスタントに入ってくることは考えにくいのが現状です。曜日や時間の都合がつかないこともあれば、需給バランスが季節によって変わったりもします。利用者様がお亡くなりになったり入院してしまったりすれば訪問件数も減りますし、減ったところに必ずしも都合よく新規訪問が入ってくることもありません。それを考えれば、年収450万円程度が妥当なところなのは理解できるでしょう。

訪問看護には営業の要素も含まれる、とは?

 病院に勤務していれば、よほど評判の悪い病院ではない限り患者さんはやってきます。しかし、訪問看護は患者さんが自分でやってくる場所でもなければ、搬送されてくる場所でもありません。

 先ほど説明したように、訪問件数が自分の給与に大きく関わってきます。仕事の質が悪ければ、ケアマネージャーからの評判も落ちそれが他にも広まって「あそこの訪問看護ステーションは最後の手段にしよう」なんてことになるわけです。悪い評判はすぐに回ります。それが続けば事業所は赤字経営になり、それでも給与を支払い続けなければいけない経営者はたまったものではありません。件数が入ってこなければ閉店するしかないのです。
 それだけ、コミュニケーション能力を含めた「看護の質」が直結してくるので、それはつまり、訪問看護師には「営業」の要素も多分に含まれているということになります。だからといって難しく考える必要もなく、普通に前向きに働いていればそれがマイナスに向くことはありません。言ってみれば1対1の看護システムという病院とは違う大きな特徴がありますから、そのぶん少し特殊であるというだけです。

 多くのケアマネージャーから「あそこは一生懸命で利用者からの評判が良いから、次に看護の必要な利用者がいたらまた頼もう」と思ってもらえれば、受けたくても受けられないような人気のステーションになります。事業所ではなく「○○さんに入ってもらえるかしら」などと個人が指名されることもあります。つまり、自分たちの看護によって仕事を取ってくることもできるわけで、これは仕事に対する大きなモチベーションとなり楽しく働くことができてくるはずです。
 そうなれば経営者もたくさんの給与を支払えるようになるでしょう。「私が事業所の収入を上げた」と、堂々と経営者に交渉してみてください。

 

 お金の話になると訪問看護からかけ離れた議論だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、訪問看護を始めるとその話がより現実的に感じられるはずです。そういったことを見越して歩合給を設定している訪問看護ステーションもありますから、チャレンジしたい方はそういう事業所を選択してみてもいいかもしれませんね。営利法人(株式会社など)が運営しているステーションのほうが独特な給与の仕組みを持っているケースが多いので、そういう面でも仕事の面白みを感じられるかもしれません。

この記事を提供しているライター
千葉県内訪問看護ステーションの元管理者。訪問看護を含め地域医療・介護・福祉の魅力を伝えるため、ホウカンジョブを運営している。
看護師 田中 良平
ホウカンジョブ事務局
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