明確な統計データが存在しないため肌感覚なのですが、訪問看護ステーションには子育て中もしくは子育ての終わったナースが多く在籍しているように感じます。そのぶん平均年齢も高くなってしまいますから、それが「訪問看護師はベテランナースが多い」と思われている理由の一つなのかもしれません。
子育てで10年以上もブランクのある看護師が、訪問看護に復職してうまくいっているケースもよく見られます。それには訪問看護ならではの働き方や職場環境が大きく関わっていますので、その理由を考察していきましょう。
病院と訪問看護ステーションの大きな違いは、来るのか行くのかというところにあります。病院は患者様が来るところ、つまり看護師は待つ側です。訪問看護は利用者様が待つところ、つまり看護師は行く側です。これによって、働き方の基本的な性質が大きく異なります。
病院には常にたくさんの患者様が来るわけで、医師や看護師をはじめとする専門職は常に一定数の人員配置で待機していなければなりません。病棟も同じでいつ入院を取るかもわかりませんから、よほど空床が多くない限りは常に満床であることを想定してシフトが組まれます。そのようなシフト組みをするには、時間や休日などの勤務条件をある程度固定しておかなければいけません。そうでなければ組むのが困難ですし、ゆえに希望が通りにくいことが多いわけです。
他方、訪問看護ステーションはまったく異なります。常勤換算で2.5人以上の看護師が必要だという決まりはありますが利用者数とは関連がなく、行先や時間は利用者様と調整しながら決めることができます。患者数に随時変動のある病院とは違いますし、当日急に訪問が始まることもごく稀です。ですので、シフト組みはもちろんあるのですが、訪問先や時間がある程度決まっているので配置の調整を自由に行いやすいという特徴があります。
もちろん事業所からすれば常勤採用がもっとも安定しますが、時短常勤や非常勤採用などそこそこ融通を利かせやすいところがメリットです。例えばあなたが週3日で15時までの非常勤希望なら、利用者様との時間調整であなたの出勤時間に厚めに寄せて訪問を組むことも可能です。そこが合致すれば、ワークライフバランスをとりながら求職側・採用側の双方にとってプラスな形で妥結できるというわけです。
プライベートに合わせた働き方が叶いやすいので、気になった訪問看護ステーションがあれば記載されている条件にこだわらずアタックしてみる価値があります。
病院や施設などでも同様の条件は存在しますが、訪問看護ステーションはまず夜勤がなく、土日休みが多いのでわかりやすいです。月に何回か土日勤務の必要な事業所もありますが、利用者様もそれぞれの生活があり平日を好むことのほうが多いため、ベースは平日だと考えてよいでしょう。
独身時代ならともかく、特に子育て中だとなるべく平日に仕事をしたいと思うことがほとんどでしょう。もちろん夜勤手当をあてにできませんから給与総額は減るのですが、家庭と両立するなら好条件と言えますね。
ちなみに、ほとんどのステーションでは常勤だとオンコール当番が回ってきます。待機が必要ではあるのですが毎日ではありませんし、その事業所の性質にもよりますが月に1回もコールが鳴らないこともあります。もちろん待機に対しての手当もあります。
鳴らないほうがいいと思うのは本心ですが、利用者様の状態や先を見越した対策の仕方によって波があります。そのあたりは面接時に必ず確認して、自分の生活に無理のない働き方かどうかを見極めてみると良いと思います。
先にも少し触れましたが、子育て中だったり子育てを終えた看護師の多いことが訪問看護ステーションの特徴です。
以下は少し古いのですが厚生労働省の資料です。平成26年の「看護職員の需給に関する基礎資料」より、看護師の年齢階級別就業場所の割合を示したものになります。
20代まではほぼ病院、そこから訪問看護ステーションや施設など徐々に地域の看護に流れているのがわかります。周囲で聞く限りでは、やはり自分の生活にマッチするから訪問看護を選択しているという方がとても多いです。介護施設も同様の理由だと推測されます。(看護のベテランだからというわけでもありませんよ)
近年は20代独身でバリバリ訪問をやっているナースも増えていますが、全体の比率としては30代後半からの方が多いですね。一概には言えませんがちょうど子育て時期というところでしょうか。
ブランクのある方にとっては不安も多いですし、復帰後の環境は重視したいところでしょう。年齢的にも落ち着いたスタッフさんが多い環境であれば相談もしやすいですし、落ち着いて仕事をリスタートできそうな感じがしませんか?(年齢で線を引く必要はないのですが、なんとなくの話です…)
人間誰しも、年齢を重ねれば経験を積んでいくものです。子育てをしていればそのぶん上積みもされます。ママ友との難しいお付き合いやさまざまな社会参加もまた経験です。
訪問看護は高齢者だけが対象ではありませんが、多くは介護保険の第1号被保険者である65歳以上の方々です。自分以上の社会経験を積まれている利用者様から勉強することはたくさんありますし、自分自身がいろんな立場で経験を積んでいれば、訪問の中で共有できる話題もたくさん出てきます。40代以降の方であれば、自分の親世代を看護するケースが多いことも一つのメリットだと思います。
ゆえに、フィットしやすいと言ってもよいでしょう。
もちろん年齢や子育て経験が全てではありませんが、医療から少し離れたところで得た経験は大きな宝物です。
高齢者だけではなく小児訪問や精神科訪問でも確実に活かすことができるでしょう。
以上、現場で感じたところを書いてみました。
若い方にも訪問看護にどんどんチャレンジしていただきたいものですが、広い視点で考えたときに、子育て中やブランクのある専門職が活躍しやすい場であることも事実ですね。
ところで、若いとか年齢を重ねるとか、なんとなく年齢で区切ってしまったところは大変失礼してしまったかもしれません。でも現場で活躍する訪問看護師は、皆さん非常に活気があって若いというのが実際のところですよ。